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SS統合スレ#6

1 :名無しさんだよもん:01/10/03 20:55 ID:yE2szgAo
dat逝きにも負けず、不死鳥の如く蘇ったSS投稿スレ。
投稿、感想、アドバイス、葉鍵っぽいSSネタならなんでもOK!
トラブルのない投稿の方法は>>2-5を参考にしてね。

力作はもちろん、実験作、シチュ等、君がSSだと思ったらそれはSSだ!
職人修行中の方も気軽に質問、投稿よろしく。
初心者の質問・素朴な疑問なども大歓迎。
スレを盛り上げるためにも、投稿作品には(・∀・)イイ!の一言でも
いいので感想を書いてみよう!
もちろん無言で答えるのも感想のうちだけど(;´Д`)

前スレ等は>>3-5

※SS投稿の告知があった場合は、投稿を優先させてあげましょう。
※板が重くならないように、長文投稿後しばらくはageない方が良いでしょう。
※スレの寿命を伸ばすために、雑談などではリダイレクトの使用を控えよう。
 かちゅーしゃ対応(>1、>1)がお勧め。

【便利な関連サイト】
mio_2ch氏による回収サイト(thx!)
http://members.tripod.co.jp/mio_2ch/
三告平氏によるSSトレーニングルーム
http://www.hakagi.net/ss/

2 :名無しさんだよもん:01/10/03 20:56 ID:yE2szgAo
【投稿の手順】

1:まず、投稿する旨を告知するカキコをすると良い。
  「今からSS投稿します。なお、××な内容です」など。
  鬼畜・陵辱・スカなどのジャンルでは特に。読むのを嫌がる人もいます。
  (時間帯・スレの状態・信念・その他で省略可)
2:書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
  (名前欄に、タイトルと通しナンバーを入れると分かりやすい)
3:回しは不要。旧スレからの変更です。
4:最後にsageで作者名・タイトル・あとがきなどと共に、
  アップしたところをリダイレクトする(>>1-2みたいな感じ)と(・∀・)イイ!

基本的には、手順の【3】だけでOK。
初めて投稿する人は、前スレや、前回投稿なども参考に。

3 :名無しさんだよもん:01/10/03 20:56 ID:yE2szgAo
【前スレ・関連スレ】

SS投稿スレ
1:http://cheese.2ch.net/leaf/kako/971/971692127.html
2:http://cheese.2ch.net/leaf/kako/975/975511698.html
3:http://cheese.2ch.net/leaf/kako/982/982281441.html
4:http://cheese.2ch.net/leaf/kako/989/989990459.html
5:http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=999983591

鬼畜SS投稿スレ
1:http://mentai.2ch.net/leaf/kako/963/963130640.html
2:http://cheese.2ch.net/leaf/kako/974/974734116.html

職人さん育成スレッド
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=992895490

葉鍵板的SS討論スレッド Ver.5
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=995773504

4 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/03 21:14 ID:68iJUufc
再建おめでとうございます。
スレ建て有り難うございます。>1 の方。

5 :なにがしなの:01/10/03 21:32 ID:u1IPTwbE
いい加減、ホームページ作りなよ

6 :名無しさんだよもん:01/10/03 21:44 ID:8BkrpAzo
スレ立てお疲れさま>1
今度こそこのスレを最後まで使い切ろうね。

7 :名無しさんだよもん:01/10/03 23:39 ID:DAL3t9r6
おお、復活おめでたう。しかし前スレは結構盛り上がってたのに。
おのれ、上げ荒らし。

8 :名無しさんだよもん:01/10/04 01:11 ID:nc9mRXR6
#5の1です。死んだんだね…(泣
とりあえず再建おめでとう。

9 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/04 02:53 ID:QZreQZBg
前スレの『accord』。感想。

二人はラブラブだった。
名雪が触り放題だった。
萌えるというか、うれしはずかしで悶絶するシチュエーションだった。はぁはぁ。

いちゃつく途中で突然鬱になる祐一に、話をはしょったかなと感じた。
いきなりシリアスに移行する前に、ワンクッションあると良かった。

あと、ラスト近くで、子供の仮面がはがれ落ちたあゆの魂の叫びが、
うまく場面を盛り上げていると思った。

10 :名無しさんだよもん:01/10/04 04:30 ID:QcKThkyA
文章が(゚д゚)ウマーく伸ばせないんだけどどうしたら(・∀・)イイ??

11 :名無しさんだよもん:01/10/04 04:48 ID:K5SGG6DA
祐一?ね
ねえ、祐一。
私との想い出忘れちゃったんだよね?
あんなに楽しかったのに忘れちゃったんだよね。
私が悪かったんだね。
ごめんね、祐一。
でも、とっても楽しかったんだよ。
毎日が過ぎていくのが惜しいくらい・・・・・。
もう一度、やり直せたら・・・・・・。

12 :名無しさんだよもん:01/10/04 11:57 ID:0JZ6Z9DY
>10
どういうSSか分からないけど、状況描写や心理描写を入れてみるってのは?

13 :Aqua:01/10/04 23:19 ID:onY9Vx/U
新スレおめでとうございます。
お疲れさまです。>1
またいろんなSSが読めますように……

で、復活祝いと言う訳じゃないですが投稿します。
KANONネタで13分割です。

14 :春の日差しの中で(1/13):01/10/04 23:21 ID:onY9Vx/U
春の訪れは、どんな気分でも嬉しいと思う。
辛く長い雪の街が装いを変え、新しい色に変わる。
冬の間は凍り付かないためだけに動いていた噴水も、今は春の喜びの声を上げている。
穏やかに降り注ぐ日差しが温かく、気持ちまで安らかになる。

あの子がよく訪れていた公園。お気に入りの場所。
ここに一緒に来たことはほとんど無かったけど、それだけに大切にしたい場所。
あの子と一緒に訪れることはもう出来ない。
この冬に起きた、あたしのたった一人の妹との悲しい別れ。
あの子の事を忘れないために、あたしはここにいる。
手にはあの子が使っていた絵の具とスケッチブック。
誕生日の日に持って帰ってきたもの。大切な人からのプレゼントだと言っていた。

『もう書きたい物は書いてきたから』

1枚だけ千切れたページを見て少しだけ悲しそうに、でも嬉しそうに笑っていた。

辛い想い出が頭を過ぎる。
それを振り払うように頭を振ると、あたしは手にした鉛筆を動かしはじめた。

公園には親子連れやカップルが春を楽しんでいる。
春と言ってもまだ水は冷たいだろうに、子供達が噴水に入り込んで歓声を上げている。
いや、少しばかり日差しがきつい分、気持ちいいのだろうか。
暖かい風が吹く中、芝生に寝ころんでいるカップル。
周りにはあたしと同じ日曜画家も何人か居た。

やっぱりいい天気ね……

15 :春の日差しの中で(2/13):01/10/04 23:22 ID:onY9Vx/U
どのくらい経ったのかは分からないが、太陽が上にあるところを見ると、そろそろ昼のようだった。
この公園には憩いの場として有名なので、その人たちを狙った屋台も多い。
ぐぅっと背伸びをすると、あたしは昼食を買おうと立ち上がった。
と、そこに見慣れた二人の姿があった。

「あ、香里。何してるの?」
声をかける前に名雪があたしを見つけたようだ。相沢君も一緒にいる。
「久しぶりだな」
「お久しぶり、二人とも。こんな所でどうしたの?」

二人の顔をまともに見たのは久しぶりだった。
栞が居なくなってから、特に相沢君の顔を見るのが辛かった。
それに顔を見られるのも嫌だった。
でも本当は言葉を掛けたかったのに、それなのに声を掛ける事が出来ない。
それは相沢君も同じだったのだろうか?
学校でただ一人、同じ苦しみを味わった者として話が出来るはずだった。
だけどそれはあの子が居ない苦しみが増すだけだと思った。
自然と相沢君とは顔を背けるようになっていたし、そんなあたし達を名雪は悲しそうに見ていた。
あたしが悪いのは分かっていたけど、どうしようもなかった。
最後に二人と会ったのは終業式だから、そんなに日は経っていない。
それなのに懐かしい感じがした。

「天気がいいし、二人でデート? 羨ましいわね」
「わ、何言うんだよ〜。ただの買い物だよ」
「俺はただの荷物持ちだ。服を買うんだとさ」

いとこ同士なのに端からみれば恋人同士に見える。
いや、仲の良い兄妹といった感じかもしれない。

16 :春の日差しの中で(3/13):01/10/04 23:22 ID:onY9Vx/U
「仲良くていいわねー。見せつけないでくれるかしら?」
「わ、だから、そんなんじゃないってばー」
「服を買うのならあたしを誘ってくれればいいのに」
「だから香里。祐一はね、いとこなんだよ。いとこが仲がいいのは当たり前だよ」
「あら。振られたわね、相沢君」
「……何言ってるんだか」

名雪の顔がくるくると表情を変える。
学校以外の場所で会っている所為だろうか。
普段感じていた重苦しい雰囲気はあたしの中にはなかった。
春の風が重い空気を運び去ってくれたのかもしれない。

「で、香里こそ一人で公園で何してるんだ?」
「別に。ただ絵を描いていただけよ」
「あれ? 香里、絵なんて描いてた?」
「たまには、ね。こんなにいい天気なんですもの」
足下のスケッチブックを名雪が拾う。
「こら、人の絵を見るんじゃないわよ」
「うわー。結構うまいんだね。見てよ祐一」
「へぇ。凄いな。香里の絵は初めてみたけど、かなりいい線いってるな」
「ありがと。でも、おだてても何も出ないわよ」
「……あ……このスケッチブック……」

あたしのスケッチブックをパラパラとめくる名雪。
その本来の持ち主に気付いたのか、相沢君が視線を逸らす。

17 :春の日差しの中で(4/13):01/10/04 23:22 ID:onY9Vx/U
「ん? どうしたの祐一」
「あ、なんでもないぞ」
慌てて取り繕う。
「そうかな?」
「なんでもないって」
「そう?……あ、これって学校だよね。うわぁ、猫さんの絵もあるよ……」
「だから勝手に見ないでよ……」

大の猫好きな名雪には、どんな出来の絵でも猫が居たら嬉しいのだろう。
そんなに面白いものでも、まして上手なわけでも無いのに食い入るように見ている。

「ところで二人とも。お昼はもう食べたの?」
「ううん、これからだよ。どうしようかって祐一と話をしてたところだったんだよ」
「あ、それだったらここで一緒に食べない? お花見やピクニックみたいでいいと思うんだけど」
「うわ、それいいね。私は賛成だよ。祐一は?」
「あ、ああ……別にかまわないぞ」
「だったら決まりだね。でもどこかで売ってるかな?」
「あそこに屋台のバンが出てるわ。ホットドックとかがあったと思うわ」
「だったら私買ってくるよ」
「あたしも行くわ。名雪一人じゃ心配だし」
「私、そこまでドジじゃないよ。二人ともなんでもいいよね?」
「ああ……」

じゃ、買ってくるね〜と言い残して名雪は走っていった。

18 :春の日差しの中で(5/13):01/10/04 23:23 ID:onY9Vx/U
「……ひょっとして、気を利かせてくれたのかしら?」
呟くあたしの顔を相沢君がじっと見ていた。
「どうしたの? 取りあえず座ったら?」
「ああ……」

相沢君が座ったのを確認してあたしもまた腰を下ろす。

「どうしたの? 名雪とうまくいってないの?」
わざとからかい口調で聞くと、相沢君がふっと顔をゆるめた。
「もう元気になったみたいだな」
「そうね。あの時は迷惑をかけたわね」
「それ、栞のスケッチブックだろ?」
「そうよ。相沢君があの子にくれたもの」
「そうか……」

相沢君がスケッチブックを懐かしそうに見た。
ゆっくりとページをめくる。

「最初の方のは栞だな。線が歪んでる」
「ひどい言いぐさね。病室では花とか花瓶とかしか描けないんだから」
「あ、花瓶か、これ」
「それ以外に何があるっていうのよ」

一枚一枚、ゆっくりとページをめくる。
絵の中にとどめられた、想いと時間。それを感じ取るかのように。

19 :春の日差しの中で(6/13):01/10/04 23:23 ID:onY9Vx/U
「ねぇ相沢君。あなたこそ元気になったみたいね」
「俺はいつでも元気だぞ」
「そうね。元気にしてないと名雪が悲しむものね」
「……別に名雪とはそんな関係じゃないぞ」
「あら、どんな関係なのかしら? あたしは同居人として名雪が悲しむ、と言ったつもりだけど」
「こいつは……」

相沢君が軽く睨む。と、お互いが思わず吹き出した。
あたしも相沢君も自然に笑えていた。
こんな風に笑える日が来るなんて、あの時には想像もできなかった。

「しかし、なにやってるんだ、あいつは」
名雪がバンの屋台の前で考え込んでいる。メニューに悩んでいるみたいだった。
「あの子らしいわ。どうせ苺のなにかがあったんじゃないの?」
「そうかもしれないな。俺が行くべきだったか」
「まあ、いいじゃない。時間に急かされているわけじゃないんでしょ」
腕を組んで悩んでいる名雪のその姿は幸せの象徴のように思えた。

20 :春の日差しの中で(7/13):01/10/04 23:24 ID:onY9Vx/U
「……こうして、絵を描いているとね」
相沢君と二人きりで話をするのは、栞のことを打ち明けた時以来だった。
穏やかな空気の中では辛いことも忘れることが出来る。
今なら素直に話が出来ると思った。

「うん?」
「あの子が見ていた風景が見えるんじゃないか、と思えるのよ」
「そうか……」
「あたしは馬鹿だったわ。あの子を否定しても何も変わらないのに」
「もし相沢君が居なかったら……あの子も、あたしも、救われなかったわ」
「あの子は相沢君のおかげで生きていたわ。それに今もあたしのなかでも生きている」
「そうだな。俺もそうだ」
「だからあらためて相沢君には感謝するわ。本当にありがとう」
「いや、俺は何もできなかった……」
「そんなこと無いわよ。……それで、相沢君は? もう大丈夫なの?」
「俺は……」

相沢君が顔を背けるように空を眺める。
でもその横顔は悲しんでいなかった。

「……俺はまだ吹っ切れてない……まだ栞が居ないことが信じられない」
「でも、栞は一生懸命だった。そんなあいつが強いと思ったし、そんなあいつが好きだった」
「落ち込んだりしていたらきっと栞は怒る。だから俺は悲しんだら駄目なんだと思う」
「……あの時、あいつは『一緒にいて後悔しないか』と聞いてきたんだ。俺は『後悔しない』と答えた」
「だから、今悲しんでいるわけにはいかないんだ。そうじゃないと俺は栞が想ってくれていた俺じゃない」
「俺は嘘つきにはなりたくない。だから、俺は大丈夫だ」

21 :春の日差しの中で(8/13):01/10/04 23:24 ID:onY9Vx/U
相沢君が笑っていた。
自分に言い聞かせるように。あたしに言い聞かせるように。
静かに笑っていた。
「だから俺は後悔なんてしていないし、あいつのことで悲しんでなんかやらない」
「……そうね。それがいいわ。それがあの子の願いだったから」
「そうか……」

あの子が最後に望んだこと。願ったこと。それはたくさんあった。
『お姉ちゃんには笑っていて欲しい』
『お姉ちゃんが悲しまないでいて欲しい』
『祐一さんが元気でいて欲しい』
『祐一さんが私のことを忘れないでいて欲しい』
『いつまでもみんなが私のことを覚えていて欲しい』
『いつまでもみんなが幸せでいて欲しい』
他愛のない、小さなたくさんの願い。
自分の事を願わずに、それ以外の事だけを口にした栞。
自分のことは全てを諦めて、それでもたくさんのことを祈った栞。
そんなあの子のためにこれから出来ること。忘れさえしなければ出来ることばかり。

相沢君が芝生の上に寝ころんだ。
あたしも真似をして寝ころんでみる。
ゆったりとした時間。
流れていく雲を眺めていると、今の時間が幸せなものに感じる。

「俺達がこうして笑ってたら、あいつも笑ってるさ」
「……そうだといいわね」

横を向くと、相沢君は目を閉じていた。
その奥には何が写っているのだろう?

22 :春の日差しの中で(9/13):01/10/04 23:25 ID:onY9Vx/U
「だから俺は笑ってるし、それに、出来れば香里にもそうなって欲しい。それがあいつの願いだっただろうから」
「……その通りよ……」

あたしも真似をして目をつぶる。
瞼に浮かぶのはあの子の顔。
それがいつまでも笑っているように。悲しみに彩られないように。
だからあたしは笑っていないといけない。

「あの子はたくさんのことを祈っていたわ。だから少しでもあの子の願いは叶えてあげたいのよ」
「例えば?」
「これ」
トン、とあたしは相沢君の体にスケッチブックを預けた。
受け取ろうと彷徨った手が、あたしの手と触れる。
そのままあたしは手を掴み、そっと握った。
今、あたしに浮かんでいるあの子の顔が伝わるように。
あの子の願いが相沢君に伝わるように。
握る手に想いをこめて。
伝わってくれるだろうか?
相沢君の手はあたしより大きくて、暖かかった。

「あたしが絵を描いているのもあの子の願いなのよ」
「そうなのか?」

『このスケッチブックにいろいろな想い出を書いて欲しい。そうすれば私も幸せになれる』
『祐一さんがくれたスケッチブックだから。でも時間がないから代わりにお姉ちゃんが描いて』

「……そうか……」
「あの子が願ったことは叶えてあげたいの。そうすれば、あの子が安らかにいられると思うから」
「……そう、だな」

23 :春の日差しの中で(10/13):01/10/04 23:25 ID:onY9Vx/U
あの子が望んだこと。
それは生きている間には全てを叶えてあげられなかった。
だけど。
きっとあの子は、今もあたしを見ている。
だから出来る事はやり遂げたい。
あたしはあの子の姉だから。いつまでもあの子の自慢の姉で居たいから。
だから。

「だから相沢君も描いてね」
「え?」
「あの子の願いなのよ。描いてくれるでしょ」
「いや、俺……絵は描けないぞ……」
「駄目。描いて貰うわよ」

優しくて、穏やかで。春の日差しを想わせる空気を持つ人。
あの子が好きだった相沢君は今もここにいる。
こうしているとあの子の気持ちが分かるような気がする。
穏やかに訪れる春。
あの子と共に辛い冬に一緒に居てくれた人。
あの子が待ち望んでいた春を一緒に過ごしたい人。

あの子の気持ちが分かるような気がした。

24 :春の日差しの中で(11/13):01/10/04 23:26 ID:onY9Vx/U
「しかし名雪遅いな。何やってるんだ……ってあれ? あいつ何処いった?」
あたしも体を起こして屋台を見る。名雪の姿がない。
「別の場所に買いに行ったのかしら?」
「私ならここにいるよ〜」
「うぁ!」
「な、名雪!?」
突然の声に振り向くと、名雪がにこにこと笑って座っていた。
そばにはたくさんの紙袋がある。

「い、いつからここにいたんだ?」
「さっきから居たよ。二人で楽しそうにお昼寝しておしゃべりして。すっごく、いい雰囲気だったね」
「な、何言ってるの、名雪」
「だって手を繋いでお昼寝してたよ」

名雪の視線があたし達の手に向けられる。
振り向いたときに外れた手は、今も相沢君の体温を覚えている。
相沢君みたいに、あたしの顔も赤くなってるのだろうか?

「名雪が遅いから、寝てしまっただけだ」
「そうそう」
「そんなに遅くなってないよ。それに騙されないんだから」
「そ、それに戻ってきてたんなら、声掛けろよ」
「掛けられる雰囲気じゃなかったよ。だって、すっごく、いい雰囲気だったもん」

名雪の視線が痛い。おたおたと慌てているあたし達と対照的だ。
「二人がラブラブだったなんて知らなかったよ〜」
「だから違うっていってるだろ」
「学校では喧嘩してるみたいだったのに、あれ嘘だったんだね」
「違うって」
「違うわよ。全部名雪の勘違いよ」

25 :春の日差しの中で(12/13):01/10/04 23:27 ID:onY9Vx/U
そんなあたし達をにこにこと笑っている。
その目は悪戯っぽく輝いている。
「そんな二人とも、大慌てしなくてもいいよ。私、分かってるから」
「多分、お前の考えは間違ってる」
「あたしもそう思うわ」
「そんな事ないよ〜。絶対あってる自信あるよ」
「……ったく……んなことより買ってきたんなら早く喰おうぜ。腹減った」
「あ、そうだね。ホットドッグとサンドウィッチ。飲み物はイチゴシェイクだけど良かったかな?」
芝生に置いてあった袋を手に取る。
「駄目って言っても、もう遅いだろ」
「そうかもしれないね。はい、香里の分。あ、ポテトと唐揚げもあるよ」
「ありがと」
順番に手にしていた物を配る。
「でもね、デザートにアイス食べようと思ったんだけど、イチゴのアイス売り切れてたんだよ……」
悲しそうに成果を報告する。
「だからバニラにしたけど、よかった? 確か祐一好きだったよね?」
「俺は全然かまわないぞ」
「そうね。あたしもバニラを食べたい気分だったわ」
「よかったよ〜」

ペタン、と座り込むと名雪はあたしの顔を見つめた。
「どうしたの、名雪?」
「でも良かったよ。香里」
「何が?」
「なんか香里が笑ってるのって、久しぶりだよね」
「そんなことないわよ」
「そうかな? 今までずっと何か我慢してたみたいだけど」
「そんな事ないって。気のせいじゃない?」
「だったらいいんだけど。でも香里は笑ってたほうがいいよ」
「……そうね。ありがと」

26 :春の日差しの中で(13/13):01/10/04 23:27 ID:onY9Vx/U
3人で食べる昼食。穏やかな中で過ごせる時間。
本当ならこの場に居るのは4人のはず。
でも、それはあたしの夢。
あの子とともに消えてしまった夢。
それでもあの子はここにいる。
あたしの中に。相沢君の中に。

「あ、そうだ。名雪も絵を描かない?」
「え?」
「相沢君が一緒にスケッチするんだって。名雪もつき合うでしょ?」
「おい、俺は描くとは言ってないぞ」
「うわ、祐一、絵を描くんだ。……うん、私も描きたいな」
「……だから言ってないって……」
「諦めなさいって。往生際が悪いわよ」
「でも私お邪魔虫さんだけど、いいの?」
「だからそれは違うって言ってるだろ」
「あれ〜? でも二人とも、顔が赤いよ〜」
「違うって言ってるでしょ。名雪の気のせいよ」

遅すぎたけど、それでも出来ることは全て叶えてあげたい。
たった一人の妹のために。
きっと今もあの子はあたし達を見ているはずだから。

あの子のために。あたしのために。この小さな穏やかな日々のために。
訪れた、この小さな奇跡を忘れないために。

だから、これからスケッチブックを埋めていこう。
あの子の想い出と共に。

27 :Aqua:01/10/04 23:30 ID:onY9Vx/U
>14-26 「春の日差しの中で」

今は秋ですが、内容は春……
季節感がまるで無しですが、許してください(笑)

28 :名無しさんだよもん:01/10/05 01:05 ID:bt9MzkfI
よかったですよ。ぱちぱち…
長めだったけど読みやすいですね。
いわゆる、くどい文章ではなくシンプルでいいです。
香里スレが最近勢い弱いので貴方のSSでテコ入れきぼんぬ。

個人的にもっと長〜い超大作も読みたい、と思ってたり。
SS討論スレで大作とか続く投稿スレは読む気失せる。とかいうアフォがいたけどね・・・

そのへんは今後、犬威氏あたりに期待しましょうか。ま、誰でもいいですけど。
最近、小粒にまとまりすぎたSSが多いと思うので・・・その中でかなりの意欲作だと思います。

29 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/05 02:00 ID:c9.sztNI
>14-26 『春の日差しの中で』

穏やかな雰囲気に魅了された。

"悲しみの一歩あと、喜びの一歩まえ"とでもいうべき、切なさの織り混ざった明るい情景描写が佳い。
私は、こういう物語は好きだ。
過去の重力に心引かれながらも、前を向いて歩いていく人々の物語がとても好きだ。

悲しい思い出の象徴であるスケッチブックに、みんなで新しい絵を書き込んでいこうと提案する香里。
それは、止まってしまった過去に、新しい未来を積み重ねていこうという意志。
死が全てを隔ててもなお、いつまでも共に居ようという、深い感情の表れ。
…。
メッセージ性においても申し分ない。素晴らしい。

技術面では、短文を多用した手法を評価したい。
この方法は、一つの文を読み下す時間が短く、また個々の文は最低限の構成しかないために
読者は常にある種の飢餓状態にあり、結果、「次」を期待してどんどん先へと読み進めていく、
という特徴を持つ(ふと、作者は速読が得意なのかなと思ったりした)。
長くとも読んで貰える文章は得難いもの。大切にしてください。

酷評ではなく、申し訳ない。

30 :狗威 ◆0gUxWrwc :01/10/05 10:46 ID:0F9sLrm.
>14-26
よかったです。ふたりの掛け合いうまいですね。
自分はそういうのが苦手なので羨ましいです。

>28
あたしゃ大作なんて書けませんよ。

31 :Aqua:01/10/05 23:37 ID:izCUjx0w
読んでいただいてありがとうございます。
前回投稿したSSが私の中では重かったので、軽く明るい内容にしたかったんです。

>28
やっぱり長めですよね。
最初に一気に書いて、いらない所とか削って、足りない所を追加したら……
元の文より長くなってる(汗)
これより長いのは訓練所に投稿したSSぐらいです。
どうも私の書くSSは平均300〜400行近くいってしまうみたいです。

>29
いつも丁寧に評論していただいて、ありがとうございます。
なにがしだよもん さんの評論はいつも参考になります。
言われて気付いたのですが、長くなる要因として「短文の多用」があるみたいです。
前から感じていた、淡々とした文章になるのもこれが原因のようです。
どうも完全に癖になってるようで、次に書くときは変にならない程度に意識してみようと思います。
それとどうして「速読が得意」って分かったんですか?(^^;)
文章から特徴が読めるとは聞いてましたけど、当てられるとかなり吃驚しました。

>30
誉めていただいて光栄です。
私が書く場合、キャラが走ってしまうことが多いので、推敲する段階で苦しむ事も多いんです。
狗威さん(犬威さん)の前作のように計算して書きたいとは思うのですがまだまだです。

32 :名無しさんだよもん:01/10/06 02:02 ID:IYEgI0DU
>>14-26
なんか暖かくていい感じ。
ほっとするような文章がいいね。

Aqua 氏の作品ってやっぱり長いね。
でもすんなりと読めるから長いのは気にしなくてもいいかも。
キャラスレだと長いのは嫌がる人が居るかもしれないけど
SSスレでは別に長くてもいいと思うよ。
昔は連載SSもあったんだから。

ところでこのスレ下がりすぎ。
まわってないけどageるよ。

33 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/06 22:36 ID:CHWX.Sn6
>>31
>それとどうして「速読が得意」って分かったんですか?(^^;)

いや、バレンツ海の氷の下で、良く似た音紋のフネと、モンキーターンで
遊んだことがあって。

…というのは大嘘です(スレ違い)。

読んでいて何となく、「速読の人が読みやすいと感じる文章というのは
こんな感じなんだろうなぁ」と思ったものですから(^_^;)

34 :或る名無し:01/10/06 23:38 ID:eZqxhp7.
>>16-24
 よかったです。
 栞バッドエンド後、というと意味もなく暗く落ちていく話が多い中、前向きなと
ころが好感をもてました。
 細かいツッコミ……もないです。

35 :Aqua:01/10/07 00:38 ID:OAMnkBTc
>32
やっぱり長いですよね。
短い文章の方がいい、って人も居るわけですから……
内容と行数のバランスはまだ難しいです。
もっと上手く書ければいいんですが。

>33
何となく、で当てられる私って一体……
でも、文章から書いた人の性格を読めるのはすごいと思います。
……私が単純なだけかも(笑)

>34
ちょうど前回書いたのがそんな感じだったです。
暗い話は苦手なので明るくしてみたい、と言うのもあったんです。
……その割には書く話が鬱っぽいのが多いのはなんでだろう……?


皆さん、読んでいただいてありがとうございました。

36 :名無しさんだよもん:01/10/07 00:56 ID:BN/rugK2
新作期待age

37 :狗威 ◆inui/iEQ :01/10/07 01:30 ID:378ZllQk
450を超えましたね。
これから、半日に一回くらいのペースで書き込みがあった方がいいかもしれません。
書き込みの少ない投稿スレの自衛策ですな。

38 :名無しさんだよもん:01/10/07 01:36 ID:qZdx1DTE
Aqua氏の作品は起承転結がしっかりしてるのが好感もてるなぁ。
なんというか、話に一本ちゃんと筋が通ってる。
俺も頑張らないといけないなぁ。

39 :名無しさんだよもん:01/10/07 02:05 ID:pHmOjVxo
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/2113/mai1.html
↑1年前のあれ。
これ書いた人、文章力もあったなぁ。

40 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/07 02:28 ID:DWBWGOuE
>39
おもしろいっ! が、この作品しか載ってません! なんで!?

41 :名無しさんだよもん:01/10/07 02:38 ID:SGFBrxYw
>39
あー、懐かしい。明太時代のSSスレの奴だったよな。
なんだっけ、「川澄舞はごちそうさまを言わない」だったっけ?

42 :39:01/10/07 02:38 ID:pHmOjVxo
>>40
これは1年前にSSスレで投稿されていたものだけど、
mio_2chさんのeternalwindにどういう意図か(続きを期待して?)あぷされていなかったので、
さっきgeoのアカウント取ってあげた物だからです。

43 :名無しさんだよもん:01/10/07 02:45 ID:SGFBrxYw
>42
続編が地図鯖移行後のSSスレになかったっけ?
少なくとも、再開予告はどっかで見たよーな。

44 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/07 02:51 ID:DWBWGOuE
>>42
ありゃま(^_^;)
それはそれは、お疲れさまでした&有り難うございます。


>>43
さーがせ、さーがせ、cheeseをさーがせー♪

と思ったら、過去ログみれませんがな(;´_`;) 何故にパスワードが…

45 :名無しさんだよもん:01/10/07 02:52 ID:pHmOjVxo
>>43
そこらへんあったような記憶もかすかにあるんですけど
地図鯖の過去ログ、見られないんですよね。

46 :名無しさんだよもん:01/10/07 02:55 ID:oFpF8bt6
このまま雑談スレとして利用すれば落ちないよ。
となればなりきりだが・・・昔SSスレにあゆのなりきりが居たなあ。
「うぐぅ、SS雑談スレ」として再利用すっか?

47 :狗威 ◆inui/iEQ :01/10/07 05:00 ID:378ZllQk
雑談スレ化はご勘弁。

48 :名無しさんだよもん:01/10/07 05:06 ID:acwoEnjg
>14−26
俺もこの作品好きです。
スケッチブックが埋まった先には何があるんでしょうか?
勝手に想像して幸せになってます。

あと、細かいつっこみというかあくまでも俺の好みなんですが
今まで書くの躊躇してたけど、書かせてもらいます。

>春の日差しの中で(5/13)
>相沢君がスケッチブックを懐かしそうに見た。
>ゆっくりとページをめくる。

この文章の「懐かしそうに」という表現には違和感を感じました。
「懐かしそうに」という説明ではなくて、描写して欲しかったです。

それと、こっから先は本当に俺の好みなんですが、もし「懐かしそうに」が
無くても、その後の「ゆっくりとページをめくる」だけで十分に描写出来てる
とも思いました。直接書かれない故の美しさっていうと大げさですが、
そういうのも大切だと思います。もちろんやりすぎはダメですが。

49 :名無しさんだよもん:01/10/07 12:11 ID:U9Tg9BAg
ウマー(゚д゚)

50 :Aqua:01/10/07 20:37 ID:T04BduRM
>38
誉めていただいて恐縮なんですが、実は起承転結はあまり意識してなかったりします(汗)
「結」は纏めるために考えてるから自然と出来ているのかも。
本当を言えば書きたい事書いてるだけなんですよ。

>48
「直接かかれない故の美しさ」ですか……
そういう手法もいいですね。
ちょっと難しいですけど「描写で心情を表す」方法もやってみます。

それとこのスレですが、「多少」の雑談は許可しても良いんじゃないでしょうか?
投稿系スレは誰かが書かない限りスレが続かないですし。

旧スレではどうやってスレを持たしていたんでしょうか?
やっぱり、頑張って投稿して盛り上げていくしかないんですかね?

……頑張るしかないな(^^;)

51 :名無しさんだよもん:01/10/08 02:56 ID:6YUJEDXY
>50
頑張れー。
貴方のSSは大好きだぞー。
これからも期待してるぞー。

52 :名無しさんだよもん:01/10/08 05:06 ID:tqQtC4Ec
    

53 :名無しさんだよもん:01/10/08 14:24 ID:KZWwCw9s
     

54 :名無しさんだよもん:01/10/08 16:56 ID:oJtoftWc
復活しましたか、SSすれ。
しかし、この板は落ちるのが早すぎます…。

55 :名無しさんだよもん:01/10/08 20:08 ID:Ql7.U04k


56 :名無しさんだよもん:01/10/08 21:56 ID:Ny5KkVm.
>16-24
んー、長いけど読みやすくて苦にならない。

短いのが好きな人がいるから……ということを気になさっているようですが、
長いのが好きな人だっていると思います。

短いのが好きな人向けのはなし「も」描けるのは(自分も好きだから)嬉しいけど、
長いの描ける人は貴重だと思います……

57 :甘えん坊将軍@DEATH:01/10/08 21:56 ID:6XDyp0XA
 ちと暗いカモ。
 そういうのが苦手な方はお読みにならないほうが宜しいかと存じマス。

58 :甘えん坊将軍@DEATH:01/10/08 21:57 ID:6XDyp0XA
「いもうとたちのこと…たのみます…」
 これが、彼女が口にした最後の言葉だった。
 その瞬間、千鶴さんは微かな笑みを浮かべ俺の前からいなくなってしまった。

 山頂から太陽が顔を覗かせた。
 温かい光が谷川の空気の冷たさをやわらげる。
 水門の上にいる俺と、俺に掻き抱かれている千鶴さんの身体にも早朝の太陽の光が降り注ぐ。
 朝。
 悪夢に苛まされている夜は、朝の到来がどれほど待ち遠しかった事か。
 だが、先ほどまで…いや、今も悪夢に苛まされている俺にとっては太陽の光が忌まわしい
ものとしか思えなくなっていた。
 その顔に、そして衣服にこびりついた血も固まりかけ、相変わらず微かな微笑みを
浮かべたままでいる『千鶴さん』をよりはっきりと俺に見せつけるから。
 千鶴さんがいなくなってから、俺はずっと彼女の身体を抱きしめていた。
 先ほど見た、初めて出会った時の、そしてまだ小さかった俺に優しく話し掛けてくれる
千鶴さんとの明晰夢の最中も。
 いくら強く抱きしめても千鶴さんの体温は感じられない。
 俺の体温を奪うだけで、千鶴さんの身体はこの俺にぬくもりを返してくれないのだ。
 昨夜愛し合った時はお互いの体温、唾液、汗が混じり合い、身も心も一つになれたのに。
 夜が明けたとはいえ、まだまだひんやりしている空気に晒され冷たくなってゆくだけの
千鶴さんの身体を抱きしめたまま、俺は何度も何度も彼女との思い出を反芻していた。

59 :届かない想い(仮題):01/10/08 21:58 ID:6XDyp0XA
 俺は、千鶴さんの亡骸を目の前にしてあてどもなく考え続ける。
 千鶴さんは俺に『いもうとたちのこと…たのみます…』という言葉を遺した。
 そして笑みを浮かべたまま千鶴さんはいなくなった。
 だが、俺が千鶴さんの願いを実際に聞き届ける、つまり梓、楓ちゃん、初音ちゃんが
姉の死という悲しみを乗り越えて生きてゆけるように支えたとしても果たして意味が
あるだろうか?
 彼女が…千鶴さんがいない今、俺にはもはやすべき事などないから。
 ただ一つ、自分でも良かったと思えることは千鶴さんが心残りなく向うへ行けた事だ。
 いや、たとえ千鶴さん本人に心残りがあったとしても、この俺自身がそう判断したのだ。
 そう。今も残っている彼女の表情から。
 俺は体温を完全に失った千鶴さんの躯を抱き上げ歩き始めた。
 早朝の太陽の熱で冷たい空気が溶けて靄がかかり始めた谷川を後にし、山道に足を
踏み入れる。
 そして昨夜来た道をそのまま戻る道すがら、俺は千鶴さんに謝った。
『ごめんよ・・・千鶴さん。俺は願いを叶えてあげられない。俺もこれから千鶴さんと同じ世界に行く。
同じ世界にいったとしても、千鶴さんを欺いた俺が同じ場所に居られるわけはないけど。
でも、絶対越えられない、破れない壁を隔てたこの世で生きてゆくよりも、千鶴さんと
同じ世界に居続けたいんだ』
 先ほど見た夢の内容が俺の脳裏をフラッシュバックする。
『何を泣いてるの? 耕ちゃん』
 我が子を慈しむ母親のような表情で俺の顔を覗き込む千鶴さん。
『千鶴さん…俺、もう泣かないよ』

60 :届かない想い(仮題):01/10/08 21:59 ID:6XDyp0XA
 俺が柏木家の敷居を跨いだ瞬間、3人の女の子が俺と千鶴さんを出迎えてくれた。
 だが、彼女達の反応は予想外のものだった。
 俺たちの帰りを待ち侘びていた様子を一瞬見せてくれたところまではいい。
 でもその後、大声で叫ぶことはないだろう。
 俺に昨晩の出来事を問い詰めることもないだろう。
 千鶴さんの身体に取り付いて大声で泣くこともないだろう。
 救急車や警察なんか呼んでくれと誰が頼んだっけ?
 ああもう。
 朝っぱらからサイレンを鳴らして近所迷惑ってものを少しは考えろっての。
 白い服と群青の服を着た人間は一体何様のつもりだ?
 俺と千鶴さんを引き離すなよ。
 そこまで考えて、俺は冷静さを取り戻す。
『別に身体が引き離されても構わないな…』
 そう。
 俺は今から千鶴さんを追いかけるから。
 千鶴さんの身体はもう既に暖かくもないし、俺に柔かな笑顔を向けてもくれないし
優しく話し掛けてもくれない。
 だから俺は千鶴さんの心がいる処と同じ場所へ行くと決めたんだっけ。
『千鶴さんは、『もう何も失わなくてすむ』って言ってたな…』
 これから何も失わずにすむのは千鶴さんだけではない。
 俺もだ。

61 :届かない想い(仮題):01/10/08 22:00 ID:6XDyp0XA
 だが…俺の心の内に渦巻くものがある。
 何か大事な事を忘れているような。
 俺はその『何か』を記憶の糸を辿り、思い出そうとはしたが徒労に終わった。
 なくした物を探す時とは違うこの感覚。
 なくした物が何であるかという事自体解らない。
 解っているのは、ただ『自分が何かを忘れている』という事のみ。
 俺は頭を振り、これ以上考える事を止めようとした。
 何故俺が今更昔の事を思い出さなければならないのか?
 俺が生まれるより遥か昔の事を…。
『遥か昔?』
 どうして俺が、自分が生まれる以前のことを忘れていると解るんだ?
 疑問への疑問がますます膨れ上がる。
 だが、別に千鶴さんとは関係なさそうだ。
 遥か昔に千鶴さんが生きていたわけじゃないから。
 俺は自分にそう言い聞かせながら目を閉じた。
 その瞬間。
 月を背にした少女、燃え盛る炎を背にした少女、そして『俺』の腕に抱きかかえられた少女の
姿が俺の脳裏を掠めた。
『!?』
 次いで、その少女を少し幼くした雰囲気の、別の少女の姿が重なる。
『エディフェル・・・リネット』
 その二人の名前なのだろうか?

62 :届かない想い(仮題):01/10/08 22:01 ID:6XDyp0XA
 千鶴姉さんの四十九日も過ぎて、漸く私たちの周りは静けさを取り戻した。
 あの日、耕一さんが全身血にまみれた千鶴姉さんを抱きかかえて帰ってきた時のことは
一生忘れられないだろう。
 いや、その時、眼前の凄惨な光景を目にして気が狂いそうになる自分がいる一方で、
不思議と冷静に事態を把握しているもう一人の自分がいた。
『これは起こるべくして起こった出来事』
 べつに第六感でも、あてずっぽうの推理でも憶測でもない。
 私の身体に流れる柏木の血…いや、エディフェルの血が伝える事実だから。
 尤も、この出来事を単なる殺人事件として捉えている警察…いや、人間に真実は
永遠に解らずじまいで終わるだろうが…。
 その警察は私たち遺族が年端の行かない子供であるということを慮ってくれたのだろう。
 随分言葉を選んで現場検証や鑑識の結果を説明してくれた。
 掻い摘んで言うと、千鶴姉さんの衣服に付着していた『鉄分』は水門のそれと一致する事。
 つまり、それは千鶴姉さんが水門の床に人間離れした強い力で何度も何度もその身体を
叩き付けられたことを意味している事。
 致命傷となったのは千鶴姉さんの腹部に残されていた大きな裂傷である事。
 そして、その裂傷の原因となった凶器が見つからず、捜査を打ち切ったという事。
 これが普通の事件であれば、遺族はまだ見つからぬ犯人に怒りを燃やすか、警察の
遅々として進まぬ捜査に難癖をつけるかの何れかだろう。
 だが、梓姉さんも、初音も、そして私も、程度の差こそあれこの事件の真相を知っている。
 人と人の間で起こった犯罪ではなく、鬼と鬼との間での殺し合いだったという事に…。
 だから別にこれ以上の捜査…というより無用な詮索を警察…ではなく人間にされることを
私たちは拒んだ。
 決してこの出来事を一刻も早く忘れたいからではない。
 これは私たち柏木家の血を引く者の問題だから。
 何の証拠もないがゆえに耕一さんを不起訴処分にすることを無言で望んでいた何も知らない
人間達にとって、遺族による捜査続行の拒否は干上がった大地に降る慈雨に思えただろうが。

63 :届かない想い(仮題):01/10/08 22:02 ID:6XDyp0XA
 いや、仮に耕一さんを千鶴姉さんの殺人容疑で起訴しようとしても裁判に持ち込む
ことはおろか被疑者取調べを行う事自体不可能だったことだろう。
 あの日以来、耕一さんは能動的に行動を起こす事はなくなったから。
 人間は勿論、私たちの問い掛けにも全く反応する様子は無い。
 私達も何度か耕一さんが収容されている病院へお見舞いに行ったのだが、病室で私達を
出迎えてくれるのはただ天井をうつろな瞳で眺めつづける姿だけだった。
 医師の話に因れば、脳波も正常、脈拍も血圧も特に異常は無く外傷も無い、全くの
健康体であるらしい。
 当然精神鑑定等もなされたらしいが、鑑定される側が全く無反応である為に判定の
下し様が無いということだった。
『ご家族の皆様の前でこう言うのもなんですが…まるで抜け殻…』
 皆まで言わさず、梓姉さんが医師の白衣の胸元を締め上げる。
『耕一が…耕一のやつが…なんだって!?』
『梓お姉ちゃん! やめて! やめてよ!』
 消毒薬の臭いが漂う廊下で、人の良さそうな初老の医師に掴みかかる梓姉さんと
それを泣きながら必死で押さえようとする初音の姿を、私は他人事のように眺めていた。
『耕一さんは…抜け殻…』
 私は病室に入り、ただベッドに横たわったまま天井を眺め続ける耕一さんの顔を見つめる。
 お医者さんの言うことはあながち間違いとはいえない。
 当事者よりも、その件には何の関係も無い部外者である人間が問題の本質をズバリ
言い当てる事があるのと同様、日々の仕事以上でも以下でもないものとして耕一さんを
診ている医師の方が私たちよりも客観的に耕一さんを捉えている。
『耕一さんはいつか起き上がる』
 そんな淡い望みを抱いている私達よりも。

64 :届かない想い(仮題):01/10/08 22:04 ID:6XDyp0XA
 千鶴姉さんの四十九日が終わるのと前後して、耕一さんの身体は病院から柏木家に帰された。
 耕一さんの面倒を自宅で看るということは私たちの間で一致したからだ。
 三人で話し合ったあのときの事が思い出される。
『別に入院させなくとも三人で役割分担すれば耕一の面倒は看られるし、それに…』
 梓姉さんが言葉を続ける。
『耕一だって親父や千鶴姉と同じ家に居たいんじゃない…』
 勿論本音であろうが、それとは別に入院費の事を云々しなかったのが梓姉さんと言えば梓姉さんらしい。
 今まで家事を切り盛りしてきた梓姉さんだからこそ、これからは出来るだけ出費を
切り詰める必要があるのを痛感しているのだろう。
 初音も私もその事に気付いていたので特に異論を差し挟むということはしなかった。
 私も見知らぬ人間に耕一さんの身体を渡すのは嫌だったし、第一私にはまだすべき事があったから。
 そう。千鶴姉さんの死を悼み、起き上がらない耕一さんをまざまざと見せ付けられて悲しみに
打ちひしがれる一方で、今の自分にできることを考えている私がいるのも事実だった。
 他人が今、私の心の内を知ったなら、それはさぞ醜いものに見えるだろう。
 今の私は現実から逃避してドロドロとした快楽に身を投じようとする獣だから。

65 :届かない想い(仮題):01/10/08 22:05 ID:6XDyp0XA
「耕一さんの…こんなに大きくなって…」
「…」
 私は耕一さん自身を咥えつつ思う。
 私は、びくっ、びくっと脈打つ耕一さん自身に舌を這わせ、両手で撫で擦っていた。
 アソコからエッチな汁を垂れ流しながら。
 私の手によって膨張してゆく耕一さん自身を口の中いっぱいで味わうと、嬉しさは
勿論だが、背中を震わせるような背徳感と奇妙な興奮に襲われる。
 耕一さん自身の先端の割れ目…尿道口に舌先を押し入れると私の唾液に耕一さんの
ちょっと苦い体液が混じりだした。
「耕一さんのを愛しているうちに…私もこんなになってしまいました」
「…」
 私は自分のアソコに空いた手を持ってゆき、慰める。
 耕一さんに身体を重ね始めた頃は、アソコを直接自分の指で刺激しない限り濡れることは
なかったのだが、今では耕一さん自身を愛するだけで濡れてしまう。
 私の拙い愛撫でも耕一さんが反応してくれるのが嬉しいから。
 ぴくぴく震える耕一さん自身を口腔内から一旦開放し、改めて両手で愛撫を始めた。
 左手で股間の付け根にある袋状の部分をやわやわと揉みつつ、右手の親指と人差し指で
輪を作り、サオの根元からくびれまで満遍なく、力を入れすぎないよう優しくしごく。
 頃合を見計らって、再び口の中にはちきれんばかりになった耕一さん自身を含み
耕一さんの体温を口で味わう。
 左手で耕一さん自身を持ちつつ、右手の人差し指と薬指で私の割れ目を開き、膣口に中指を
挿し入れるとぞくぞくする感覚が全身を震わせる。
「私…耕一さんのが欲しいです…」
「…」
「耕一さんのを…私のに挿れて…いいですか…?」
「…」
「はい…」

66 :届かない想い(仮題):01/10/08 22:06 ID:6XDyp0XA
 私は耕一さんにまたがり、カチカチになった耕一さん自身をゆっくりと自分のアソコへ導いた。
「ああ…」
 私の割れ目が耕一さん自身の先端を包み込むと快感が全身を走り、期せずして甘いため息が
漏れてしまう。
 今にも絶頂を迎えてしまいそうだったが、私は何とか押し寄せる快感の波をこらえ
逞しい耕一さん自身を私の一番奥深いとこまで迎え入れる。
「くぅぁああ…」
 既に愛液でとろとろになった私のアソコは、いともあっけなく耕一さん自身を飲み込んだ。
 膣壁いっぱいに、そして子宮口に耕一さんが感じられる。
 私の膣に入りきらず、サオの根元の部分を残した耕一さん自身を見ながら、私は
腰を上下に振り始めた。
「んっ…ふぁっ! あっ!」
 耕一さんのが、私の子宮口にコツンコツンと当たるたびに私の膣そのものを押し広げん
ばかりに膨張する。
 先ほど耕一さんを射精直前にまで追い込み、私も絶頂を迎える直前にまでアソコに刺激を
与えていたから絶頂は近そうだ。
「あっ…あっ…こ…耕一さぁん…」
「…」
 身体を前に倒して耕一さんの唇に口付けた瞬間、耕一さんはびゅくびゅくと熱い精液を
私の膣内に射出してくれた。
「ひっ…! ふぁぁぁぁぁっ!」
 同時に私も絶頂に達し、私の身体中の全神経が一点に集中したような感覚に襲われる。
 下半身から全身に広がる、じんわりとした感覚。
 耕一さんの温かい精液を膣壁と子宮口で味わいつつ、私は耕一さんの唇に口付けたまま腰の動きを更に早めた。
 快感を貪り尽くすために。
 今度は先ほどとは違い、私は自分自身の愛液と耕一さんの精液が交じりあったモノがたてる
ぐちゅぐちゅという卑猥な音を耳にしつつ行為に没頭し始めた。

67 :甘えん坊将軍@DEATH:01/10/08 22:09 ID:6XDyp0XA
 続きはまた後日。
 投稿される方がおられましたら気になさらずにどうぞ。

68 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/08 22:32 ID:T8/99FIM
>>58-66 『届かない思い(仮題)』 その1(?)

遺骸を抱えて自宅に戻った直後の、茫然自失する耕一の描写が良い。
家人の混乱ぶりをそのまま描かなかったところが、あまりの衝撃に心が萎えきった様を表現出来ていて、
優れていると感じた。

いきなり楓が耕一との交合に走る展開には、(前世が絡むとは言え)やや性急さを感じた。
ではあるが、それは、この後に続く十八禁描写の出来を損ないはしない。
兄と仰ぐはずだった男の身体に跨る少女の貪婪さが、実に魅力的だ。
口でねとねとに愛撫を繰り返して放精寸前に導いてから、その怒張を自らの中に導き入れる楓。
みずからを娼婦のような指遣いでくつろげるくだりは、姉の想い人と身体を重ねることへの背徳感と
相まって、何とも淫猥である。
射精を身体の奥深くで受け止めたあとも結合を解くことなく、小刻みに腰をゆすり立て、さらなる快楽を
追い求める様が刹那的で、これもまた良い。

今後の展開が気になる。果たして家人は彼らの行為を知らぬのであろうか。
それとも…?

続編に期待しています。

変な感想で申し訳ない。

69 :>>58-66:01/10/08 22:45 ID:v1nV5pto
エロい!
ただエロツール(失礼)としてはつかえそうだけど
いまいちあれでないか、楓エロすぎないか。
せめて49日ぶんとはいわないからもうちょっとまえふりがほしい。
これじゃエロ猫、、、

さらなるエロきぼんぬ

70 :名無しさんだよもん:01/10/09 02:57 ID:c39UME7c


71 :OVA:01/10/09 23:49 ID:SL1uVZY.
久しぶりに葉鍵板にSSを投稿します。
昔、Kanonをプレイする前に書いたやつをリメイクしてみました。
それでは逝きます。

72 :OVA:01/10/09 23:51 ID:SL1uVZY.
 「ふう、すっかり遅くなってしまったな・・・」
 「こんな遅くまで、お疲れ様でした、久瀬会長」

  三月下旬の春休み、久瀬は新年度の新入生達を迎える為の準備の為、学校の生徒会室で他の生徒会役員達と共に準備をしていた。
  準備を済ませた頃には既に辺りは真っ暗になっており、久瀬は同じ生徒会の役員である斎藤と共に帰路へと着くため、渡り廊下を歩いていた。

 「あれ?」
 「どうした、斎藤?」
  不意に立ち止まった斎藤に久瀬が尋ねると、斎藤は渡り廊下の先を指差して答えた。

 「あんな所に、人が・・・」

                                『川澄舞のそ・の・後☆』

 「おい!そんなところで何をしているんだ!?」
  久瀬は廊下の先に佇んでいる人物にずかずかと近づいて注意をする。
 「・・・・・・・・・」
 「黙ってないでなんとか言いたまえ!」

73 :OVA:01/10/09 23:52 ID:SL1uVZY.
  相手の顔が確認出来る距離まで久瀬が近づくと、そこには一月下旬にこの学校を退学になったはずの川澄舞、その人であった。
 「!?」
 「・・・・・・・・・」
  舞は左手に洋剣を持ち、暗い渡り廊下に静かに佇んでいる。
  久瀬はそんな舞に嫌悪感を露にして詰め寄った。

 「・・・川澄舞、君はこの学校を先日退学になったはずだ!何故ここに居るんだ!」
 「・・・しかもこんな時間にそんな物まで持って!どういうつもりなんだ!」
  舞は久瀬の顔をちらりと一目だけ見ると再び視線を戻す。
 「ここはもう君の居るべき場所ではない!今すぐ出て行きたまえ!!」
 「・・・・・・・・・」
 「・・・このっ・・・」
  舞が久瀬の罵声を受けてもまったく気にせずそのまま立っていると、業を煮やした久瀬は舞の腕を掴んで校舎の外に引きずり出そうとする。

「・・・!?」
  久瀬が舞の腕を掴もうとした瞬間、その場の空気が変わった。
  舞が倒すべき物、姿の見えない敵・・・魔物が現れたのだ。
  魔物は久瀬と舞の間、即ち久瀬の正面に踊り出るように移動して舞に攻撃しようとする。
  舞はこちらに腕を伸ばした久瀬をとっさに剣を持ってない右手で突き飛ばすと、左手に持った剣を横薙ぎに振り払った。

74 :OVA:01/10/09 23:53 ID:SL1uVZY.
  どんっ。
 「うわっ!?」
  どすん・・・。

  ぎいぃぃぃんっ!

  魔物に舞の攻撃がヒットする。
  舞の攻撃を受けた魔物はじりじりと後退する。
  舞は魔物の気配を頼りに距離を取ろうとする魔物をじりじりと追い詰める。

 「な、何をするつもりなんだ・・・。や、止めたまえ・・・」
  舞に突き飛ばされた久瀬はじりじりと剣を片手ににじり寄る舞に情けない声で抗議する。
 「・・・魔物は許さない」
 「な、何を言っているんだ・・・」
  久瀬は尻餅をついたまま後ろに下がる。
  舞は剣の切っ先を久瀬に・・・いや、久瀬の目の前の魔物に突きつけたまま、じりじりと迫ってくる。

 「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!た、助けてくれぇぇぇぇぇぇっ!」
  久瀬は情けない声を上げ、舞に背を向け走り出した。
  久瀬がその場を逃げ出すのと同時に、魔物も久瀬の後を追うように移動し始める。
 「・・・逃がさない」
  舞は魔物を逃がすまいと魔物の追跡を始めた。

 「ひいぃぃぃぃぃっ!誰か、誰か助けてくれぇぇぇぇぇっ!」

 「た、大変だ・・・。け、警察を・・・」
  逃げ出した久瀬を追いかけていく舞の後姿を見ながら、あまりの出来事に驚いて固まっていた斎藤は公衆電話の場所へと駆け出した。

75 :OVA:01/10/09 23:54 ID:SL1uVZY.
 「ひいぃぃぃ、ひいぃぃぃぃっ・・・」
  久瀬は全力で舞から逃れようとするが、普段から生徒会での仕事等で運動不足気味の久瀬に、魔物と毎日戦っていた舞を引き離すことは出来ない。
 「ひいっひいぃぃっ・・・がっ!?」
  やがて、息を切らせた久瀬は足をもつれさせ、階段を踏み外してしまった。

 「うわあぁぁぁぁぁっ!!」
  どっしぃぃぃぃぃぃん。
 「・・・う、うう・・・」
  階段の踊り場に落ちた久瀬は何とか起き上がろうとする。
  だがその時、魔物が久瀬の頭上を通り過ぎようとした。

  たんっ。

  階段から何かが飛ぶような音を聞き、久瀬が後ろを振り向くと舞が剣を振りかぶって久瀬目掛けて飛び込んできた。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

  舞は空中からの落下する勢いも込めた渾身の一撃を久瀬の頭上に居る魔物目掛けて放った。

  ・・・・・・ファンファンファン・・・・・・。

 「・・・逃げられた」

  舞は斬る瞬間に姿を消した魔物に苛立ちながら、ぽつりと呟く。

 「・・・・・・あ、あぁぁぁぁ・・・・・・」

  どんどん近づいてくるサイレンの音を聞きながら、久瀬は目を一杯に見開いたまま、涙と小便を垂れ流しながら虚空を見つめ続けていた・・・。

76 :OVA:01/10/09 23:55 ID:SL1uVZY.
  ・・・翌日の朝、相沢祐一は顔を洗ってから食堂に向かうと、朝食の準備をしている叔母の水瀬秋子に挨拶をして席に着いた。

 「祐一さん、もう少し待っててくださいね」
 「わかりました」

  朝食が出切るまでの間暇を潰そうと祐一はTVをつけようとすると、従姉妹の名雪が目を擦りながら二階から降りてきた。

 「うにゅ・・・おはようございます〜」
 「なにいっ、休日なのにこんなに朝早く名雪が起きてくるとはっ。今日は大雪かっ。天気予報天気予報っ」

  祐一がおおげさにそう言ってTVをつけると、名雪は頬をぷうっと膨らませて文句を言う。

 「もしかして、酷いこと言ってる?」
 「全然、そんな事はないぞ」
 「うー」

 「名雪、祐一さんは今日あゆちゃんとデートだから、今日の天気を気にしているのよ」
  秋子が朝食をテーブルに運びながら祐一を茶化す。

 「あ、秋子さん・・・」
 「そっか、あゆちゃん昨日退院したんだよね」
 「よかったね、祐一」
 「あ、ああ・・・」

77 :OVA:01/10/09 23:55 ID:SL1uVZY.
  祐一達がそんなやり取りをしていると、
  TVのニュースが、丁度昨日起きた事件のコーナーに替わった。

 「あ、ほらほら、昨日起きた事件だってさ」

  祐一が話題をすりかえようとTVの音量を大きくする。

 『昨夜、奇異市内の私立高校で今年一月にこの高校を退学になった女子生徒が、新入生歓迎の準備で遅くまで校内に残っていた男子生徒を洋剣で襲うという事件が発生しました』
 『襲われた男子生徒はこの高校の生徒会役員で、女子生徒の退学に関わっていた為、女子生徒は襲われた男子生徒を恨んでいたという事です』
 『襲われた男子生徒は幸い軽症で済んだものの酷くショックを受けており・・・』

 「うわあ・・・怖いね・・・」

 『今回逮捕された女子生徒は在学中もたびたび問題を・・・』

 「今時の子は忍耐力が無いっていいますけど・・・」

 『警察の取り調べに対し、この女子生徒は私は魔物を討つ者だから・・・などと意味不明の供述を繰り返しており・・・』

 「おいおい・・・キチガイのフリして罪を逃れようってか・・・最悪だな、この女・・・」
 「あれ、キチガイ?・・・もしかして・・・」

 「ん、どうしたの、祐一?」

 「・・・もしかしたら、この犯人、俺が転校したばっかの頃会った奴かも・・・」

78 :OVA:01/10/09 23:57 ID:SL1uVZY.

 「・・・どういうこと?」
 「ほら、前にお前から借りたノートを教室に忘れて、夜中に取りに行った事あったよな」
 「うん」

 「その時にな、剣をもって夜の校舎にいた女子生徒が居たんだよ」
 「それで何してんだって聞いたらさ、私は魔物を討つ者だからとか、訳わかんねー事言ってんだよ」
 「んで、その女その日はそのまま帰っちまってさ、次の日また学校で会ったんだ」
 「そしたらさ、意味も無くへらへら笑ってるちょっと頭の弱そうな女子生徒とつるんでたんだよ」
 「それで一緒にいた子のほうがさ、一緒にメシでもどうかって言ってきたんだけどさ、なんかあいつらやばそうだったんでさっさと断って逃げたんだよ」

 「そうだったんだ・・・。あっ、そういえば、わたしも同じ部活の子から、なんか問題ばっかり起こしている先輩がいるって聞いたことあるよ」
 「そうか。じゃあ、やっぱりあの女だな。特徴が全部一致してるし…」
 「…ふう・・・あの時、関わり合いにならなくて良かったぜ…」
 「こんなキチガイと関わってたら、今ごろどうなってたかわからないもんな・・・」
 「まったく、こんなキチガイ、永遠に塀の中に閉じ込めておいて欲しいぜ!」

 「祐一さん、名雪、ご飯ですよ」

 「はーい。行こ、祐一」
 「ああ」

  祐一は手に持ったリモコンでTVを消すと、さっさと食卓へと向かった。

79 :OVA:01/10/09 23:59 ID:SL1uVZY.
 「祐一さん、もし良かったらあゆちゃんを家に誘ってもらえますか」
 「え?どうしてですか?」
 「実は、あゆちゃんの退院祝いにたい焼きをご馳走してあげようと思いまして」
 「そうだったんですか。・・・でも、もうたい焼きなんて売ってませんよ?」
 「大丈夫ですよ。わたしが作りますから」
 「秋子さん、たい焼きなんて作れるんですか?」
 「はい」
 「ありがとうございます。きっとあゆも喜ぶと思います」

  祐一は秋子に礼を言うと、朝食を素早く平らげて家を出ると、あゆとの待ち合わせ場所へ歩き出した。

80 :OVA:01/10/10 00:00 ID:TheD1sR2
  しばらく歩いて商店街の一角にたどり着くと、祐一は足を止めて誰にとも無く呟いた。

 「ここであゆと再会したんだよな・・・」

  祐一の脳裏にあゆとの思い出が蘇ってくる。
  ここで、初めて出会った。
  ここで、毎日待ち合わせをして遊んだ。
  ・・・そして、ここで再会した。
  あゆとの思い出はここから始まって、そしてこれからも続いていく・・・。
  祐一はそんな事を考えながら、あゆとの待ち合わせの場所まで再び歩き出した。

  …やがて、待ち合わせの場所に祐一がたどり着くと、あゆは猫耳みたいな白い帽子と一生懸命うしょうしょと格闘していた。
  祐一はそんなあゆの姿を見て、思わず優しい顔で微笑むと、あゆの背後に近づいて、ぽんと背中を叩いて話し掛けた。

 「よお。不審人物」
 「遅いよ。遅すぎるよ!」

  祐一は、再びあゆと出会えたことを、思い出を紡いで行ける奇跡に、誰にとも無く感謝した。

  ・・・・・・ありがとう。

81 :OVA:01/10/10 00:01 ID:TheD1sR2
 『EDテーマ 風の辿り着く場所』

  足元に風 光が舞った
  日常にだけ積もったぶんの奇跡が
  見上げれば雲 遠くへの帰路
  幼い日の自分よりも早く
  雪解けを待っていた
  子供のように走る 光る滴 飛び跳ねてる
  明日の出会いさえ 気づかずにいる
  季節たちの中で
  輝いているよ
  世界中には どんな想いも
  叶う日がくる
  ずっと旅をしてゆく僕らに
  小さな精たち舞い降りる

                                                                           完

82 :OVA:01/10/10 00:08 ID:TheD1sR2
おわりです。
前回名無しさんに指摘されたとこを直してみました。
ただ、一時間で書き上げた代物なので、すこしつめが甘かったかも。
前回書いた時はカノン未プレイでドリキャスで書いた物だったんで今回の物のほうがちょっとはマシになったと思います。

83 :OVA:01/10/10 00:15 ID:TheD1sR2
>>72-81です。
以前書いた物はhttp://members.tripod.co.jp/mio_2ch/にある舞のその後です。

84 :OVA:01/10/10 00:22 ID:TheD1sR2
あれ?半角で打ったはずの・・・が全角になってる・・・。
おかしいな・・・。
メモ帳からのコピペはこうなるのかな・・・?

85 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/10 02:31 ID:bn.6lp5.
何処かで見たことがあると思ったら、そうでした、mio_2chさんのところで
おみかけしたんでした。

>72-81  『川澄舞のそ・の・後☆』

「へらへら笑ってるちょっと頭の弱そうな女子生徒」に大爆笑。
こっ、このイノチ知らずがッ!
誰しもそう思っているが、言ってはならんことだぞ、それはっ!
さゆりん親衛隊に捕まる前に自刎せよッ! (自刎せよッ!)

…というのは冗談ですが、

通るルートが違うとこうなるという、夢も希望もない、ある意味リアルな物語が
面白かったです。
…舞がキチガイって。いや、確かに、そうなんだけど。そりゃあの人は常軌を
逸してるんだけどっ!
ヒロイン2名を容赦なくコキおろした後、すがすがしく健康的な会話を
弾ませる辺りが、これがまたなんとも毒々しくて…ひどいなぁ…(;´_`;)

難を言えば、舞がとっつかまったあと、なかなか物語が収束しなくて、
やきもきさせられたくらいですかね。
でも読みやすくて良かった。

また、毒電波を放出してください。フヒッ。

86 :名無しさんだよもん:01/10/10 10:39 ID:kb98DvJ.
>72-81
最初読んだときは舞主観で進むものと思ったので、急に祐一主観に
変わったときにちょっとついて行けなかった。

ちょっと祐一が鬼畜な感じがしたけど、知らない人が見たら舞と佐祐理さんは
ああいう感じに見えるんだろうな。

うん、結構面白かった。

あ、それと最後のEDは要らないんじゃないかな?

87 :或る名無し:01/10/11 01:47 ID:a01OcIlQ
>>72-81
 以前拝見した時に「舞のその後」というより、始まる前みたいだ、ということをコメント
しました。
 なるほど、これなら確かにあゆシナリオに入った時に起きた、舞の結末の様に見え
ます。
 ですが、86さんも言われているように最後のあゆとの会話の部分は要らないのでは
ないでしょうか。付けるのであれば、「一人のヒロインと結ばれた影で、別のヒロインが
不幸になっている」ことをもっと全面に押し出した書き方をされるとよかったのではな
いかと思いました。

88 :名無しさんだよもん:01/10/11 21:08 ID:xaKNyKJA
保守

89 :狗威 ◆inui/iEQ :01/10/11 21:25 ID:MGOUz8G.
これよりSS……、というよりネタを一本投下します。
投稿が終わるまでレスはご遠慮下さい。

90 :Prologue:01/10/11 21:25 ID:MGOUz8G.
「いってきます」
 そう言って玄関のドアに手をかける。
 開け放ったれたドアの向こうからは、温かな春の陽射しがさしこみ、新たな季節の訪れ
を肌で実感することができた。
 久しぶりに袖を通した制服は、なんだかわたしの物じゃないみたいで、なかなか体に馴
染まない。まるで長い間使われなかったことに、制服が怒ってるみたいだった。

 わたしは、ずっと学校をお休みしていた。別に学校が嫌いなわけではない。むしろ大好
きなくらいだった。

 小高い丘の上にある校舎、教室の窓から見える風景、校門までまっすぐにのびる坂道。
 わたしは、それらすべてが大好きだった。
 でも、わたしは長く学校を休んでいた。それにはちょっとした理由があった。

 制服を着て、久しぶりに歩く通学路。学校に近づくにつれ、わたしと同じ制服を着た生徒
たちが目立つようになる。
 真新しい制服に身を包んだ数人の生徒がわたしの横を通り過ぎた。
 この春から、わたしと同じ学校に通う新入生。その表情はとても輝いていて、これからの
学校生活に大きな期待を抱いているようだった。

 そんな生徒達の中に混じって歩く通学路の途中、わたしはふと、足を止めた。
 わたしの目の前にあるのは、まっすぐにのびる長い坂道。少し見上げれば、そこには、
わたしの通う学校の校門が見える。

91 :Prologue:01/10/11 21:26 ID:MGOUz8G.
 道の両脇には、満開の花を咲かせたさくらの木々が立ち並び、まるでアーチのように学
校までの道のりを覆っていた。

「はぁ……」

 と、わたしは小さなため息をもらした。
 そよ風が吹き、さくらの木々がわずかにそよいだ。

「この学校は、好きですか?」

 だれに対するでもなく、そうひとり言をつぶやく。
 さくらの花びらが風に吹かれ、ひらひらと舞い落ちた。

「わたしはとってもとっても好きです。でも、なにもかも…変わらずにはいられないです。楽
しいこととか、うれしいこととか、ぜんぶ。……ぜんぶ、変わらずにはいられないです」

 だれに対するでもない言葉。
 舞い散るさくらの花びらにのせるようにして、ただつぶやく。

「それでも、この場所が好きでいられますか?」

 風にのったわたしの言葉は、ひらひらと宙をただよい、そして地面に落ちた。

「わたしは……」

92 :Prologue:01/10/11 21:27 ID:MGOUz8G.

「見つければいいだけだろ」

「えっ……?」

 突然かけられた言葉に、わたしはおどろいて声の方向に頭をむける。
 そこには、わたしと同じ学校の、同じ学年の制服を着た、見知らぬ顔の男の人が立って
いた。

「次の楽しいこととか、うれしいことを見つければいいだけだろ。あんたの楽しいことや、
うれしいことはひとつだけなのか? 違うだろ」

 そう言って、その人は面倒臭さそうに坂道を登り始めた。
 次の楽しいこと、次のうれしいこと、わたしにとってのうれしいこと……。

「ほら、いこうぜ」

 ――なんとなく、わたしもその人のあとに続いて坂道を登った。

 まっすぐにのびる、長い、長い坂道。
 さくらの花びらは、ひらひらと舞い落ち、長い坂道を絨毯のように彩っていた。


 FIN

93 :狗威 ◆inui/iEQ :01/10/11 21:30 ID:MGOUz8G.
>>90-92 『Prologue』
クラナドSS一番乗りを目指して急造したSS(というかネタ)です。
しかし、残念ながらその栄誉は、母乳スレの職人さんにとられてしましました。南無〜。

94 :OVA:01/10/11 21:59 ID:tHeWvkOM
>>なにがしだよもん氏
いつも感想ありがとうです。
・・・と言っても、このコテは複数あるコテのひとつなんでわからないでしょうが( ̄ー ̄)ニヤリ

>難を言えば、舞がとっつかまったあと、なかなか物語が収束しなくて、
やきもきさせられたくらいですかね。

確かに構成の練りこみが甘かったですね・・・。
次はもう少しマシなの書いてみます。

>また、毒電波を放出してください。フヒッ。
いつだってだしてますよ〜。
ここじゃないどこかで別の名でね( ̄ー ̄)

>>86
>最初読んだときは舞主観で進むものと思ったので、急に祐一主観に変わったときにちょっとついて行けなかった。
やはり視点変更に不満を持たれましたか・・・。
実は以前ある人物にSSを進呈した事があるんですが、その時も視点変更について指摘された事があるんですよ。
どうにかうまい方法ってないですかねぇ・・・。

ほんとはSSでなくて、同人漫画かDMNL辺りで発表出切ればいいんですけどね・・・。
そんな知恵も技術もないし。(泣

>>或る名無し氏
前回に引き続き今回もありがたい指摘をありがとうございます。
mio_2ch氏に回収されるようなら、指摘された所を直してみます。

95 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/11 22:08 ID:A.lMraWQ
>>90-92
いや、なかなかな出来ですよ。
なにげに本編との互換性がかなり高いと思われるです。
あの限られた資料だけで、うまく物語に仕上げたもんだなぁ、という印象を受けました。

ホームページの説明を読んだだけだと、何が何やらちんぷんかんぷんだったんですが、
本作を読んで、やっと、クラナドの目指す萌えが分かった…ような気がするです。

犬威氏の作品で3本目ですね。クラナドSS。
正式発表からまだ一日も経ってないのに…うたわれるもののときとはエライ違いや。
…コンチクショウ(笑)

96 :高野山の呪いだよもん:01/10/11 22:21 ID:A08qNchE
久々にSS書き込むです。アレな内容ですが結構長いので、
終わるまで書き込みを控えてもらえると嬉しかったり。

97 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳):01/10/11 22:25 ID:A08qNchE
その日俺は、いつものように渚を迎えに来ていた。
「おはようっす」
 ぞんざいな挨拶をしながら店内に入る。香ばしい焼きたてのパンの匂いに、つい鼻がヒクヒクと蠢く。
「あら、おはよう、朋也くん。…今日はどうしたの?」
 レジの中から、いつも通りのほんわかとした笑顔で答えてくれたのは早苗さん。渚の母親…のはずだが、どう見ても20代にしか見えない。いや、下手すると10代かも…。
「…ねえねえ、朋也くん?」
 まさか血が繋がってない母娘とか…いや、それはない。顔立ちといい性格といいそっくりだし…。
「…もしもーし、聞いてるのかなーっ?」
 いや、実は二人は姉妹だとか…うーむ、これはありうるかも…。
「えいっ!!」
 とりとめのない妄想に耽っていた俺の身体に、不意に暖かい感触が密着するのが感じられた。
 この柔らかい感触は、もしや…。
「もーっ、朋也くんってば。返事くらいしなきゃダメでしょ」
「…って早苗さん、いつの間に…」
 いつの間にかレジから出てきた早苗さんが、背伸びをするようにして俺の耳元を覗き込んでいた。俺の身体にしがみつくような体勢のため、俺の肩から二の腕にかけてが、そのふくよかな胸に密着するような格好だ。
 しかし、渚は見事なまでにぺったんこなのに、これは意外と豊かな…って、何を考えてるんだっ、俺。
「…とりあえず離れてくれませんか、早苗さん」
 イーストのものと早苗さん本来のものが混じり合ったような甘い香りにクラクラしつつ、何とか平静な声を作って言う。
「うーん、ちょっと冷えちゃってたところなの。朋也くんの身体って暖かいから、もすこしこうしてちゃダメ?」
 俺に体重を預け掛けながら、邪気のない表情で問い掛けてくる早苗さん。
「…もちろんですとも、早苗さんっ。それに、もっと暖かい場所もありますよ…」
 と言いつつ俺は、ズボンを下ろし…などといったことができるわけもなく、心残りに思いつつも冷たく告げる。
「ダメです。ほら、さっさと離れて離れて」
「もうっ、朋也くんのけちんぼ」
 ぷうと膨れた表情になって、俺の身体から離れる早苗さん。うーむ、勿体無い事をしたか。

98 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)2:01/10/11 22:26 ID:A08qNchE
「それで、今日はいったいどうしたのかな?」
 何事もなかったかのように、小首を傾げて聞いてくる早苗さん。いや、実際何もなかったんだけど。
「どうしたって…いつも通りに渚を迎えに来たんですが?」
「あらあら、それは大変」
 ちっとも大変そうに見えない表情で、のんびりと言う早苗さん。
「大変って、何がですか?」
「もう渚は行っちゃったのよ。朋也くんが来ないって心配しながら」
 早苗さんの言葉に、慌てて腕時計を見る。午前8時30分。早くはないが、いつも通りギリギリ間に合う時間だ。
 と、早苗さんが肩をちょいちょいと突っついているのに気付き、そちらに視線を向ける。
 そして、斜め上に見上げている早苗さんの視線につられ、更にそちらに視線を動かす。
「…なるほど」
 店内に掛かっている妙にファンシーな時計の針は、10時30分を指していた。明らかに大遅刻だ。
「これだから安物の腕時計はだめですね」
「…きっと、単なる電池切れに不注意で気付かなかったんだと思うな、わたし」
 ジト目でこちらを見る早苗さん。さりげなく話を逸らす。
「しかし早苗さん、なんでもっと早くに言ってくれなかったんですか?」
「うーん、あんまり朋也くんが普段通りだったんで、ひょっとしたらわたしのほうが勘違いしてるのかなって」
 しかし相変わらず大らかというか何も考えてないと言うか…まあ、早苗さんらしいし、これはこれでいいか。
「ところで朋也くん、急がなくていいの?」
「ええ、どうせ遅刻ですからね。のんびり行きますよ」
「きっと渚は拗ねてるから、後でフォローよろしくね」
「ううっ…」
 渚の拗ね顔を思い浮かべ、ちょっとげんなりとする俺。あの表情されるとどうも調子が狂うんだよな…。

99 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)3:01/10/11 22:28 ID:A08qNchE
「ふふっ、よろしくお願いしましたからね」
 にこやかな笑みを浮かべる早苗さん。俺は何となくその立ち姿を眺めた。
 薄手の白のブラウスの上に、お馴染みのピンクのエプロン姿。先ほどの感触のせいか、どうしても胸に目が行ってしまうのは仕方ないな。しかし、こうして見るとさほど大きくも見えないが、フカフカで柔らかかったよな…。
 などと邪な感慨など抱きつつぼんやりと見つめる。と、俺はとある異変に気付いた。
「…あれ?」
 ピンク色の布で隠された柔らかそうな隆起の突端が、何故か白く湿っているのだ。
 そう言えば、さっきまで早苗さんの胸が触れていた俺の二の腕にも、ちょっと濡れたような感触が…。
「あの、早苗さん…」
 俺の視線に気付き、きょとんとする早苗さん。
「もう、朋也くんったら。あんまりまじまじと見ちゃダメよ…」
 目に「?」の色を浮かべたまま自分の胸に視線をやり、数秒後、表情を凍りつかせる早苗さん。
「あ、あ、あ、あ、あの、これは…」
 絵に描いたような動転っぷりの早苗さん。と、俺は以前に早苗さんから聞いていた話を思い出した。
 そう言えば、最近なぜか胸が張って、おっぱいが出そうだって言ってたよな。
 あのときは単なる冗談かと思っていたが、まさか本当だったとは…。
「こ、これはその、だからつまりっ、ねっ、朋也くん。わかるでしょ?」
 羞恥に顔を赤く染めて、支離滅裂な言葉を口走る早苗さん。いかん、悪戯心が疼く…。

100 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)4:01/10/11 22:30 ID:A08qNchE
「あれっ、胸が濡れてますよ。どうしたんですか、早苗さん?」
 故意に驚いたような声で聞いてみる。みるみる真っ赤になっていく早苗さん。
「あ、あのね…」
 恥ずかしげな風情で、モジモジと口ごもる早苗さん。ううっ、可愛い、可愛すぎる…。
「えっ、聞こえませんよ?」
 つい、ワザとらしく耳に手を当てて聞き返してみる。
「その…おっぱいが…」
 更に真っ赤になる早苗さん。ダメだ、どうしてもいじめたくなってしまう…。
「困るなあ、早苗さん。もっと大きな声で言ってくれないと」
「ううっ…わかってるくせにぃ…朋也くんのイジワル…」
 とうとう、涙で目を潤ませる早苗さん。やばいっ、調子に乗って苛め過ぎたか。
「わーっ、冗談ですっ。すいませんっ、早苗さん」
「…ぐすっ、朋也くんのばかぁ…」
 泣きべそをかく早苗さんを、慌てて慰める俺。
「ごめんなさい、早苗さん。俺、ちょっと調子に乗っちゃって…」
「あ、あの…朋也くん…手…」
「えっ…わあっ!!」
 早苗さんを泣き止ませようと慌てる余り、いつの間にかその華奢な肩に手を回していたことに気付き、慌てる俺。
 手のやり場に困ってあたふたする俺を見て、泣き顔のままクスッと微笑む早苗さん。

101 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)5:01/10/11 22:32 ID:A08qNchE
「でも、朋也さんも男の子ね。ちょっと安心しちゃった」
「…安心したって、何がですか?」
 妙に感慨深げな早苗さんの言葉に、思わず聞き返してしまう。
「ほら、渚って泣き虫なところがあるでしょ。こんな風にしっかりと慰めてくれる彼氏がいたら安心だなーって」
「…俺は別に渚と付き合ってるわけじゃないんですが」
 当然のようにしれっと問題発言を口にする早苗さんに、思わずツッコミを入れてしまう。あと「あんたの方が泣き虫だろっ」というツッコミも入れたかったが、また泣かれると大変なので、そっちは口にしない。
「またまたーっ、照れちゃって。もう、可愛いんだから、朋也くんってば」
 そんな俺の気も知らずに、きゃいきゃいとはしゃぐ早苗さん。つーか、さっきまで泣いてたはずなのだが。
「はあ…もういいです…それじゃ、俺、そろそろ行きますんで」
 この話題をつっこまれると大変な事になりそうなので、そそくさと店を出ようとする。
「あっ、ちょっと待ってくれるかな、朋也くん」
 と、俺の制服の裾をつまんで制止する早苗さん。
「何ですか?」
「あのね、朋也くんにお願いがあるんだけど…」
 上目遣いで俺を見上げ、お願い光線を照射してくる早苗さん。ううっ、その視線は反則っす…。
「…お願いっていったい、何ですか」
 俺の疑問に対する回答は、それこそ想像を絶する、驚天動地、前代未聞の内容だった。
「あのね、胸が張って苦しいんだけど、吸ってもらうのをお願いしてもいいかな?」

102 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)6:01/10/11 22:34 ID:A08qNchE
「……」
 頭にぼんやりと靄がかかったようで、上手く働いてくれない。今、確かに、胸を吸ってくれって言ったよな。
いや、まさか。そんなことあるわけないじゃん。相手は級友の母親だぜ。でも、同級生と言っても通じるかも
しれない若々しさだよな。おいおい、そんな問題じゃねーだろ。母乳を吸うって事は、当然あのけっこう豊か
なおっぱいに吸い付くってことで、ってそれはいくらなんでもないよな。うんうん、聞き間違いに違いない。
そりゃそうだよな、そんな上手い話が転がってるわけないよな。
 ようやく脳内会議に結論を出した俺。一応、もう一回確認してみる。
「すいません、どうも空耳が聞こえたようで。もう一度お願いできますか?」
 俺の言葉に、何故かぷうと頬を膨らませて答える早苗さん。
「もう、ちゃんと聞いて欲しいな。わたしのおっぱいを吸い出して欲しいの。こんなこと、朋也くんにしか頼めないんだから」
 何てこったいハニー。どうやらアレは聞き間違いじゃなかったらしいぜ。どうする、俺。これって誘われて
るんだよな。据え膳食わぬは男の恥って言葉もあるわけだし、ここはリクエストに答えとくか。いや待て、相
手は渚の母親だぞ。うっかり誘いに乗っちまったら、明日からどんな顔して渚に会うんだよ。それに早苗さん
だってそれは承知のはずだろ。ってことはからかわれてるんだよな、やっぱ。そうか、意外とお茶目な性格の
早苗さんだけにありうるよな。つーか、さっきからかわれたのへの反撃だろ。おお、これでつじつまは合うな。
やるな、俺。とすれば、ここはさり気なく切り返すのが一番だな。
「いいですよ、早苗さん。じゃあ、胸をはだけてもらえますか?」
 余裕たっぷりに切り返す俺。
 これで早苗さんは真っ赤になって「もう、冗談なのに。朋也くんのえっち」とか言うはず、言うはずなのだが…。

103 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)7:01/10/11 22:36 ID:A08qNchE
「はい、判りました。…なんだか恥ずかしいですね」
 頬をほんのりと赤く染めて、素直にエプロンを外す早苗さん。余りの展開に目が点になっている俺をよそに、白のブラウスのボタンに手を掛ける。その姿にようやく石化状態が解け、慌てて止めに入る俺。
「わーっ、ストップストップ!! ちょっと待ってください、早苗さん!!」
「はいっ?」
 本当に胸をはだける寸前で、ぴたりと手を止めた早苗さん。きょとんとした顔で俺を見ている。
「…あの、冗談じゃなかったんですか…?」
「もう、朋也くんたら。冗談でこんなこと頼むわけないでしょ」
 真顔で返答され、リアクションに窮する俺。
「いやしかし、早苗さんは渚の母親なわけだし、こーゆーのはちょっと」
「だから、もう少しすれば朋也くんはわたしの息子になるわけだから、ほら、頼んでも問題ないでしょ」
 当然のことのように説明する早苗さんに、どこからつっこんでいいのか判らず、呆然とする俺。
 と、急に悪戯っぽい微笑みを浮かべる早苗さん。
「ははーん。ちょっとえっちなことを考えてたでしょう。でもダメよ。えっちなことしたら渚に言いつけちゃうからね」
 …早苗さん、えっちな事を考えずにおっぱいを吸う自信なんて、俺にはないです。
「…いや、そんなことはないんですけど、ほら、やはりこういうのは良くないんじゃないかと…」
 言葉を濁す俺に、一転して悲しげな表情になる早苗さん。
「そうよね…こんなおばさんのおっぱいなんて吸いたくないよね…渚に比べると張りもないし…ぐすっ」
 みるみるうちに涙目になる早苗さん。やばい、朋也ちん、ぴんち。
「わーっ、待ってくださいっ!!」
 慌てて宥めに入る俺。そんな俺を涙目のまま見上げる早苗さん。
「…じゃあ、やってくれる?」
 …だからその視線は反則ですってば、早苗さん。
 結局俺は気が付いた時には「はい」と答えてしまっていたのであった。

104 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)8:01/10/11 22:41 ID:A08qNchE
「じゃあ、よろしくお願いしますね」
 そう言って、ゆっくりとブラウスのホックを外す早苗さん。見てはいけないと思いながらも、
そのちんまりとした指先から視線を外す事ができない。
 そうしているうちに、ブラウスの前はすっかりはだけられ、大人の女性の下着と言うにはシン
プルすぎるデザインの白いブラジャーが露わになった。そのフロントホックに手を掛けた早苗さ
んだったが、食い入るように眺めている俺の視線に気付き、たしなめるように言った。
「もう、朋也くんったら。そんなに見つめちゃダメよ」
 その声に、心臓を鷲掴みにされたかのようなショックを受け、慌てて反対側に振り向く俺。
「はい。よくできました」
 早苗さんがクスリと笑う気配が伝わってくるが、とてもそんなことを気にしている余裕はない。
全身の感覚神経は、もぞもぞとブラの外す衣擦れの音に集中してしまい、つい生唾を飲み込みそ
うになるのを堪えるので精一杯だ。
「よいしょっと…はい、振り向いてもいいわよ、朋也くん」
 その言葉におずおずと振り向く俺。と、その視界に飛び込んできたのは、前を大きくはだけ、
胸を申し訳程度に片手で隠した早苗さんの姿だった。
「あ…」
 何も言えずに口ごもってしまう俺。早苗さんの透けるように白い二つの膨らみは、形よくふっ
くらと盛り上がっており、先端の方だけがなんとか柔らかそうな二の腕で隠されているといった
状態だ。ブラウスの内に篭っていた熱気がほんのりと甘い匂いで、俺の鼻腔を心地よくくすぐってくる。
「すっかり垂れちゃってるでしょ。こんなところを見られるのって、ちょっと恥ずかしいわ」
 何か見当違いの恥ずかしさを感じているらしい早苗さん。俺は声が出ないので、ぶるぶると首
を振って「そんなことないです」という思いを伝える。実際、早苗さんの膨らみは、確かにぴち
ぴちに張り切っているといった感じではないものの、しっかりと均整の取れた盛り上りを見せ、
何より、押さえる腕によって微妙に形を変えているのに、どこまでも柔らかそうな印象を受ける。

105 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)9:01/10/11 22:43 ID:A08qNchE
「それじゃ、お願いしようかしら」
「……」
 早苗さんにそう言われても、どうしていいのか判らずに呆然と立ち尽くす俺。
「もう、早くしてくださいってば」
 と言うと早苗さんは、右手を胸から外すとぐいっと俺の身体を自分の方に引き寄せ、顔を自分の胸に押し付けてきた。
ちなみに俺はと言うと、そのはずみでちらりとみえた、ぬめぬめと濡れたピンク色の乳首に目を奪われたままで、何の
抵抗もできずになすがままである。ううっ、情けないぞ、俺。
「さあ、朋也さん。よろしくお願いしますね」
 顔全体が、まるでふわふわのマシュマロのように柔らかく温かい膨らみに埋め込まれ、危うく窒息しそうになって息
を大きく吸い込む。と、うっとりするほど甘く、それでいて懐かしいような匂いが胸一杯に広がり、自分が何をしてい
るのか判断できないような、そんな陶然とした気持ちになる。目の前に薄い桃色の突起物が目に入る。それが早苗さん
の乳首だと気付いた時には、既に俺はそれに猛然としゃぶりついているところだった。俺は、夢中でその乳首を口に含み、
頬をすぼめて吸い付いた。いつしか、舌にうっすらと甘い味が感じられてくる。
「はぁ…」
 気持ちよさげな吐息を漏らす早苗さん。俺は、口腔内にじわじわと滲み出てくる母乳の感触を感じながら、口の中に
広がるほんのりとした甘さに酔いしれた。唇で乳首をしごくたびに、霧のようにじわっと染み出してくる母乳。味その
ものは薄いが、何となく郷愁を呼び起こすような独特の甘味に舌が蕩けてしまいそうだ。俺は夢中でそれを飲み干しては、
更なる母乳を吸い出していく。
「もう、無理して飲まなくていいのに、朋也くん。ここに吐き出してくれればいいのよ…」
 傍らに置かれた容器を示しているらしい早苗さんだが、そんな言葉は耳に入らない。
 とめどなく湧き出してくる母乳を、無我夢中でひたすら飲み込んでいく。

106 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)10:01/10/11 22:45 ID:A08qNchE
「ねえ、朋也くん。もっと強く吸ってくれないかな。軽く噛むみたいな感じで」
 俺の頭を軽く抱きながら、耳元に囁いてくる早苗さん。俺はそのリクエストに応えるべく、いつの間にか硬くなっている乳首を、更に強く挟んで吸い上げた。
「はぁ…そうよ、そんな感じでよろしくね…」
 と、今度は、滲み出ると言うより、勢いよく噴出してくる母乳。幾筋ものスプレー状になったそれが、俺の口腔内を溢れんばかりに満たしていくのが判る。ゴクゴクとそれを飲み込み、咽喉を潤していく。
「ふふっ、朋也くんったら一生懸命吸っちゃって。もう、赤ちゃんみたいで可愛いんだから」
 穏やかな笑みを浮かべながら、あくまで優しい声で言う早苗さん。その手はいつの間にか俺の頭に乗せられ、髪の毛を軽く櫛けずるように撫でてくれていた。何も考えず、早苗さんのおっぱいに集中する俺。
 途中、言われるがままに反対側の乳首に移動したような気はするが、詳しい事は覚えていない。俺は、早苗さんの、
「はい、おしまい」
 という声が聞こえるまで、ずっと赤ん坊のような無心な気持ちのままだった。

107 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)11:01/10/11 22:48 ID:A08qNchE
「はぁ、すっかり楽になったわ。ありがとね、朋也くん」
 再び反対側を向き、身繕いを整えながら言う早苗さん。俺はと言うと、アブノーマルな体験にすっかり元気に
なってしまった息子を押さえるのに精一杯だった。明らかにこれって誘われてるよな。今度こそ、据え膳食わぬ
は男の恥だぞ。いやしかし、渚のことはどうする? そのときのことはそのとき考えればいいさ。早く決心しな
いと早苗さんにも失礼だぞ。そうか、確かにそうだな。年上の女性にここまでしてくれたんだ。きっちり最後ま
でしてもらうってのが筋ってもんだよな。よし、行くんだ、俺。
 そろそろと身繕いを終えようとする早苗さんの肩に手を回そうとする。あと10センチ、あと5センチ、あと…。
「おい」
 突然、後ろから掛けられた声に、心臓が飛び出すかのような驚きを感じる俺。おそるおそる振り向く。と、そこには、予想通りの人物の不機嫌そうな顔があった。
「ところでお前、何してんだ?」
 相変わらず無愛想な秋生の声に、ぱあっとした笑顔で振り向く早苗さん。既に服装の乱れは完全に直され、いつも通りの格好だ。
「お帰りなさいっ。もう、いつになっても帰ってこないから、心配してたんだからっ」
「ああ、すまんすまん。配達の帰りに薬局の親父と話し込んじまってな。ほら、春の新製品の試供品だとよ」
「わあっ、嬉しい。ありがと、秋生さん♪」
 俺を完全に無視してラブラブモードに突入する二人。その隙にこっそり逃げようとするが、そうはいかなかった。

108 :早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)12:01/10/11 22:52 ID:A08qNchE
「そういえば、こいつと二人で何やってたんだ?」
 不機嫌そうな顔に戻り、俺を顎で指し示す秋生。
「ほら、あなたがいつになっても帰ってこないから、あなたの代わりにおっ…」
「わーっ! わーっ! わーっ! わーっ!」
 素直に答えようとした早苗さんを、慌てて遮る。そんなことをこのクソ親父に知られたら、いったいどうなることやら…。
「ん? どうしたの、朋也くん?」
 不思議そうな表情の早苗さんの耳元に、急いで囁く。
「すいませんっ! このことは二人だけの秘密ってことで」
 一瞬、きょとんとした早苗さんだったが、すぐににんまりとした表情になって囁き返してきた。
「うふっ、赤ちゃんみたいで恥ずかしいんでしょ。もう、朋也くんたら、本当に可愛いんだから♪」
 ふう…相変わらず誤解があるようだが、なんとか秘密にはしてくれそうだ。
 と一息ついたのも束の間、今度は目の前に秋生の猛禽類めいた顔があった。
「おい、朋也」
「は、はい」
 いかん、つい弱腰になってしまう。やはり後ろめたさが…。
「俺の愛娘だけならいざしらず、愛妻にまで手を出しやがったらどうなるか、判ってるな?」
 本気の声に思わず怖気づく俺。こいつはやると言ったことは必ずやる男だ。ばれたら果たしてどうなるか…。
「そ、それじゃ俺、学校に行くんで…」
 柄にもない愛想笑いを浮かべながら、じりじりと後ずさる俺。と、早苗さんが、置いたままになっていた俺のカバンを持ってきてくれた。とてとてと歩み寄ってきて、カバンを渡し際に俺に耳打ちしたセリフは、
「またよろしくお願いね。でないと今日の事を、渚に言いつけちゃうんだから」
 ぺろりと舌を出した早苗さんに見送られ、よろよろと外に這い出る。ああ、これからどうなるんだろ、俺。
 そんな俺の問いに答えてくれるはずもない、あくまで晴れ渡った春の空なのであった。

                           <END>

109 :高野山の呪いだよもん:01/10/11 22:55 ID:A08qNchE
>>97-108

「早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)」

でございます。我ながらああ長かった。しかし一行の文字数制限うざいっす。
という訳で、今朝がたに某スレで書いていた、鍵の新作「CLANNAD」の早苗さん母乳SSの完成版だったり。
構成も何も決めずに勢いだけで書いたのでアレな内容ですが、お祭りだと思って勘弁してください。
主人公がなんとなく鍵主人公にあるまじき性格になってますが、まあお祭りということでひとつ。
所要時間は全てひっくるめて4時間くらい。生涯で一番早く書けたSSでした(w
推敲不足のために見苦しい点もあるかと思いますが、そこはお祭り…ってしつこいですね。
しかし情報が殆どないってのは、書きやすかったり書きにくかったり。
それでは、そーゆーことで。

110 :名無しさんだよもん:01/10/11 23:03 ID:T5oQxRKY
へ……?
あ、あの史上初の「CLANNAD」SSの作者は高野山の呪いだよもんさんだったのか!!
マンセー!

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